『世界を大いに盛り上げるためのその一・明日に向かう方程式の覚え書き』

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▼サーファー野郎の万物理論? - JGeek Log

5 スカイダイバー(東京都) [sage] Date:2007/11/22(木) 01:40:43
これは…なみのりろんではないな
http://news23.2ch.net/test/read.cgi/news/1195663134/5

まったく専門外ですが、分からないなりに、ごくごくユルくここまでの流れをおさらい。記述の不正確さに関してはご容赦くださいませ。

われわれが暮らす宇宙は、重力・電磁気力・強い力・弱い力の「四つの力」で成り立っていると言われています。そして、この中で重力を記述するのが「一般相対性理論」であり、残りの電磁気力・弱い力・強い力を記述するのが「量子力学」(における「大統一理論」)です。ところが、一般相対性理論量子力学は、ともに実験や観測により証拠を得たものであるにもかかわらず、とても相性が悪い。四つの力をひとつの簡単な理論でまとめる(「超大統一理論」あるいは「万物の理論」)ことは非常に難しく、したがって、二十世紀後半の物理学の最大の課題だったわけです。

一般相対性理論

  • 重力とは、質量を持つ物体が引き起こす時空の歪みによる
  • 時空とは、時間と空間を合わせた4次元空間のことである

量子力学

  • 粒子状態の存在確率を記述する
  • 電子や光子は粒子のようにも波のようにも振る舞う
  • 不確定性原理

なぜ相性が悪いのか? 普通、重力は大きい力のように感じますが、量子力学にとって、重力は相対的に非常に小さい力となります。例えば、われわれはリンゴにはたらく重力を観測することはできますが、リンゴを構成する原子やさらに原子を構成する素粒子のスケールでは、時空の歪みによる力はものすごく小さなものでしかないのです。量子力学で記述できる原子核の内部で核子が結びつく強い力は、重力の10の40乗倍もの大きさです。量子力学にとって、重力はほとんど誤差の範囲でしか見いだせないのです。逆に、ブラックホールのような巨大なスケールの物理現象を記述する一般相対性理論にとって、時空というマス目自体が振動し確率でしか与えられないというような量子力学的な考え方は、これまたほとんど誤差の範囲になってしまいます。

マクロを扱う一般相対性理論とミクロを扱う量子力学を統合する理論として、これまで有力であると言われていたのは、いわゆる「超弦(ひも)理論」です。これは量子力学で示される素粒子の振る舞いはすべて弦の振動によって与えられるものであり、さらに4次元の裏側に織り込まれたいくつかの次元を数学的に想定することによって、一般相対性理論とも矛盾しない記述が可能になるというものです。ところが超弦理論には研究者によって5つものバージョンが派生してしまったので、それらをさらに統合するものとして提唱されたのが、エドワード・ウィッテンの「M理論」です。

M理論超弦理論×5

  • 11次元の超重力理論
  • 宇宙はループした膜(brane)のようなものでできている
  • 1次元の弦ではなく、小さな半径を持つ円筒形の2次元の膜である

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する

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ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く

ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く

ブライアン・グリーンの本とかリサ・ランドールたんの本とか読むと、もっと具体的に分かるようですが、読んでないぼくにできるのはここまで(´・ω・`)。で、実は今回のE8理論は、このM理論とは異なる角度からのアプローチのようです。

▼ループ量子重力理論 - Wikipedia

量子宇宙への3つの道 (サイエンス・マスターズ)

量子宇宙への3つの道 (サイエンス・マスターズ)

M理論超弦理論と比べると人気は落ちるようですが、実は一般相対性理論量子力学を統合する超大統一理論の候補としてもうひとつ、この「ループ量子重力理論」というものもあります。ロジャー・ペンローズによる「スピンネットワーク」と呼ばれるもので時空を考えるそうです。そしてこの理論の紹介者として知られるのが、リー・スモーリン。すなわち今回のGarrett LisiによるE8理論をかなり「マジで受け止めてる」模様である「名のある人」です。どうやらループ量子重力理論はE8理論と相性が良いらしい。確かにこちらの紹介動画を見ると、英語も数学も分からなくても、「空間はノード(点)とノードにつながる線を使いグラフで表される」というループ量子重力理論となんとなく似てる雰囲気は感じられると思います。

YouTube - Is this the theory of everything?

それにしても、サーファー物理学者がこんな曼荼羅みたいな図形で宇宙を示すって中沢新一の『雪片曲線論』かよと。めっちゃタオイスト。中沢自体は(茂木健一郎的な意味で)最終的に信用できないんですが、書かれた時代を考えれば、少なくとも『雪片曲線論』に関してはスゲーよなあと思ったり。今回いきなりこんなものを紹介したのも、そんな『超解読 涼宮ハルヒ』を書いていた頃の気分を思い出したからにほかならないわけですが。*1

雪片曲線論 (中公文庫)

雪片曲線論 (中公文庫)

超解読涼宮ハルヒ

超解読涼宮ハルヒ

同じく量子重力理論の候補である超弦理論は、時空は背景場として最初からそこに存在するものとして定義しており、理論自身のダイナミクスにより決定されているわけではない。それに対しループ量子重力理論は、一般相対論と同様に理論自身が時空そのものを決定している。(背景独立性)
ループ量子重力理論 - Wikipedia

ちなみにWikipediaのループ量子重力理論のところに書いてある「背景独立」と「背景依存」というのもかなり難しい問題。M理論は背景依存であり、E8理論が背景独立であることも、E8理論が期待される理由でもあるようです。つまり、これを例えるなら……

長門有希は、おそらく背景独立のはず、なんだろうか。E8の幾何学模様と雪片のメタファー。

ハルヒの説明によるとSOS団を恒久的に存続させるために何やら考えてみた、というようなものらしいのだが、俺にはさっぱり理解不能な文章だった。混沌とした秩序、と形容したくなるような意味不明さで、まるでハルヒの頭の中身がそのまま漏れて出てきたみたいな印象を持ったのだが――。
(『涼宮ハルヒの憤慨』P159)

涼宮ハルヒの憤慨 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憤慨 (角川スニーカー文庫)

▼So-net blog:来夢望瑠_日々平凡:リー群E8(248次元!)の構造が明らかに!?\(^o^)/

追記:超弦理論にもE8が出てくるようです。

▼ニコニコ動画(RC2)‐GARRETT LISIの万物理論?

追記:YouTubeの動画がニコニコ動画に輸入されて翻訳コメントが付き始めています。

*1:『超解読』の参考文献リストにも『雪片曲線論』を入れてます。